飲食店や給食施設の厨房に欠かせないグリストラップですが、その清掃作業には転落や中毒といった命に関わる危険が潜んでいます。2023年には保育園の調理員が清掃中に亡くなる事故も起きており、作業方法の見直しを迫られている管理者の方も多いはずです。
本記事では、行政機関や公的団体が公表しているグリストラップ関連の事故事例を紹介したうえで、清掃時に想定されるリスク、事故を防ぐ具体策、万が一発生した場合の初動対応までを一括して解説します。複数施設を担当する安全管理責任者の方にも役立つ内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
グリストラップの清掃は日常業務の一部と捉えられがちですが、過去には死亡災害を含む重大な事故が現実に起きています。事故の状況を具体的に知ることは、自施設の作業方法を見直すうえで欠かせない出発点です。
実際に公表された事例と、構造の似た設備で発生した類似災害を紹介します。いずれも特殊な現場ではなく、保育園やビルといった身近な施設で起きている点に注目してください。
2023年8月、広島市安佐南区の市立保育園で、調理員がグリストラップの清掃中に死亡する事故が発生しました。広島労働局の死亡災害速報によると、開口部は約60cm×30cm、深さは約1mで、被災者は頭から槽内へ転落した状態で発見されています。RCC中国放送は、槽が給食室の外の地面に設置され、被災者は57歳の女性調理員、死因は溺死だったと報じています。
報道では、発見は「今から清掃する」と伝えてから約1時間後とされています。事故後、広島市は市議会の委員会で、複数人での清掃や身を乗り出す作業の禁止を市内の保育園へ周知したと説明しています。
参考:保育園で女性調理員(57)死亡 「グリストラップ」の清掃中か(RCC中国放送)
死亡に至らなくても、蓋の扱いに起因する転落・負傷の危険は日常の清掃に潜んでいます。次のような場面は、典型的に想定されるヒヤリハットです。
厚生労働省の2025年確定値では、休業4日以上の死傷災害135,333人のうち転倒が37,195人と全体の約27.5%を占め、事故の型別で最多でした。油を含んだ床と蓋のわずかなずれが重なるだけで、骨折などの重傷につながりかねません。
厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」には、ビル地下の汚物槽の清掃中に硫化水素中毒が発生した事例が掲載されています。槽底に残った汚物をかくはんした際に硫化水素が放散され、吸い込んだ作業者が槽内で倒れました。救助に向かった同僚も相次いで被災し、1名が死亡、1名が休業しています。
原因は、次の3点でした。
グリストラップでも、人が槽内へ立ち入る大型・地下型の設備や、腐敗した汚泥が長く滞留する槽では、同種の危険の評価が必要です。
参考:汚物槽内の清掃中に発生した硫化水素中毒(職場のあんぜんサイト)
紹介した事例を踏まえると、グリストラップ清掃で警戒すべきリスクは大きく3つに整理できます。
設備の深さや設置場所によって危険度は変わるため、自施設のグリストラップがどのリスクに当てはまるのかを確かめながら読み進めてください。
屋外や床下に埋設された深型のグリストラップでは、槽内への転落が最も重大なリスクです。広島市の事故のように深さ1m前後の槽でも、頭部が水中に入り、負傷や姿勢の制約で起き上がれなければ、浅い水深でも溺水する危険があります。
身を乗り出してバスケットを引き上げる、底の汚泥をすくい取るといった動作は重心が開口部の上へ移りやすく、体勢を崩した瞬間に転落へ直結します。踏み場が油で滑りやすければ危険は一段と高まるため、「深さ1m程度なら大丈夫」という思い込みは禁物です。
浅型の設備であっても、負傷のリスクは軽視できません。グリストラップ周辺の床は油分と水分で滑りやすく、転倒による打撲や骨折が起こりやすい環境です。コンクリート製や鋳物製の蓋は重量があるため、開閉時に指を挟む、腰を痛める、落として足を直撃するといった事故も想定されます。
復旧が不十分で蓋がずれたままだと、通行する他のスタッフが段差につまずく二次的な危険も生まれます。汚泥や廃油の容器を持ち運ぶ動作も腰部への負担が大きく、無理な姿勢が続けば腰痛などの労働災害につながります。
人が入れるほど大きな槽や地下ピット式の設備では、酸素欠乏と硫化水素中毒への警戒が欠かせません。汚水・汚泥が滞留する閉鎖的な槽内では、腐敗の過程で酸素が消費され、硫化水素が発生するおそれがあります。高濃度のばく露では、急速に意識消失や呼吸停止に至ることもあります。
労働安全衛生法令では、汚水など腐敗しやすい物質を入れた槽・ピットの内部は「第二種酸素欠乏危険場所」に該当し得ます。該当する作業では、次のような措置が必要です。
事故を防ぐ鍵は、個人の注意力に頼らず、施設として仕組みを整えることにあります。広島市の事故を受けて、市が複数人での清掃を再発防止策に掲げたのも同じ考え方です。日常の点検、手順書の整備、専門業者への委託という3つの観点から、具体的な対策を紹介します。
清掃に取りかかる前に、作業環境そのものを点検する習慣をつけましょう。一例として、次のような項目が挙げられます。
深さのある槽の周囲には立入禁止表示やカラーコーンを置き、清掃中だと第三者にも伝わるようにすれば、開けた槽への転落を防げます。点検結果はチェックリストに残し、施設間で共有しましょう。
施設ごとに清掃のやり方がばらばらな状態は、それ自体がリスクです。蓋の外し方から清掃の順序、蓋を戻した後の位置確認までを文書化し、全施設共通の作業手順書として運用しましょう。耐油性の手袋や滑りにくい靴などの保護具、使用する清掃道具も手順書に明記します。
深型・屋外型の設備は2人以上での清掃を社内の基準とし、1人が作業、もう1人が監視につく体制を基本にしましょう。閉店後や給食終了後の単独作業は見直し、身を乗り出さないと届かない箇所は道具で対応するか、業者への委託を検討してください。
人が槽内へ立ち入る清掃は、従業員に行わせるべきではありません。濃度の事前測定や換気設備、空気呼吸器、有資格の作業主任者といった管理体制が必要で、一般の厨房スタッフが担える範囲を超えているためです。
大型のグリストラップや地下ピット式の設備、長期未清掃の槽の汚泥引き抜きは専門業者へ任せ、作業主任者の資格や測定器・空気呼吸器といった安全体制も確認しましょう。なお、京都市では清掃で生じる油分・泥状物は産業廃棄物(廃油・汚泥)に区分されるため、許可品目を含めて処理まで相談できる業者だと安心です。
参考:グリーストラップに溜まった廃棄物の取扱い(京都市 京(みやこ)さんぱいポータル)
どれだけ備えても、事故の可能性を完全にゼロにはできません。重要なのは、発生直後の初動と、その後の再発防止の流れをあらかじめ決めておくことです。とりわけ槽内での事故は救助者が二次被害に遭いやすいため、「むやみに助けに入らない」という原則を全スタッフへ共有し、掲示物や研修で施設ごとに周知しておきましょう。
転落や中毒が起きたとき、無装備で槽内へ入ったり、開口部へ身を乗り出したりしてはいけません。先述の汚物槽の事例でも、倒れた同僚を助けようとした作業者が硫化水素を吸い、命を落としています。槽内で人が倒れていたら直ちに119番へ通報し、周囲を退避・立入禁止にして救急隊の到着を待つのが原則です。
換気は、安全な場所から既設の換気設備を操作でき、排気を人のいる方向へ流さない場合に限って行います。救助は、訓練を受けた救助者が救出用具や空気呼吸器等を用いて行うものです。
負傷者への対応が落ち着いたら、再発防止のための調査に移ります。従業員が死亡または休業した労働災害では、労働安全衛生規則第97条に基づく「労働者死傷病報告」を所轄の労働基準監督署へ提出する義務があります。休業4日以上は遅滞なく、4日未満は四半期ごとの提出が必要で、電子申請が義務化されています。
報告と並行して事故原因を設備・手順・教育の3面から検証し、手順書の改訂や研修への反映まで行って初めて再発防止といえます。
清掃体制を見直したい、リスクの高い槽だけでも外部へ任せたいとお考えの方は、京都市の一般廃棄物・産業廃棄物(廃油・汚泥)収集運搬業許可をもつ山本清掃が運営する「ごみの窓口」にぜひご相談ください。
私たちは京都市伏見区を拠点に創業75年以上、市内全域で事業者様の廃棄物処理と清掃を支えてまいりました。グリストラップ清掃から汚泥・廃油の処理までまとめてご相談いただけます。保育園や高齢者施設、社員食堂など複数施設の管理でも、設備の状況に応じた無理のない頻度とプランをご提案いたします。
お見積もりは無料です。作業範囲と料金は書面でご提示し、追加作業が必要になる場合の条件も事前にご確認いただけます。
お電話やLINE、お問い合わせフォームからお気軽にお問い合わせください。
山本 智也代表取締役
資格:京都3Rカウンセラー・廃棄物処理施設技術管理者
廃棄物の収集運搬や選別、営業、経営戦略室を経て代表取締役に就任。 不確実で複雑な業界だからこそ、わかりやすくをモットーにあなたのお役に立てる情報をお届けします。