「閉店後にシンクの水が流れにくくなり、グリストラップの蓋の周りからあふれそうになった」「バスケットのごみを捨てたら流れは戻ったのに、数日後にまた同じ症状が出た」。厨房を抱える飲食店では、こうした詰まりが繰り返し起こることがあります。
福岡市や郡山市、川崎市などの自治体は、グリストラップ(グリース阻集器)の清掃不足が排水管や下水道管の詰まりにつながると注意を呼びかけています。詰まりを防ぐには、バスケットの残さ、浮いた油脂、底の沈殿物をためない清掃と、油脂を流し過ぎない使い方の両方が欠かせません。
本記事では、詰まりの原因、放置した場合のリスク、スタッフができる応急処置、業者に任せる作業、再発を防ぐ予防策の順に解説します。
京都市下水道排水設備指針と解説(2023年版)によると、グリース阻集器を設置しても油脂を100%は除去できません。残った油脂は時間の経過とともに排水管の管壁に固着し、次第に閉塞を起こすと説明されています。
グリストラップがあっても油脂の一部は下流へ流れるため、清掃や使い方に問題があれば詰まりはさらに起こりやすくなります。主な原因は、槽の中で汚れがたまる3つの箇所と、油が下流へ抜けてしまう使い方の次の4つです。
参考:京都市下水道排水設備指針と解説(2023年版)第2章(京都市上下水道局)
岡山市や函館市の資料で示されているのは、3つの槽のうち第1槽のバスケットで残飯や野菜くずを取り除く構造です。このバスケットに残さや生ごみをためたままにすると、詰まりの原因になります。
福岡市が下水道管の詰まり事故の主な原因に挙げるのも、グリース阻集器の清掃不足や未設置です。同市は、油をまったく使わない店でも、調理器具や食器を洗えば肉や魚の油脂が流れ出ると説明しています。揚げ物の少ない業態でも、バスケットと油脂の管理は欠かせません。
参考:飲食店のみなさまへ(岡山市)
参考:グリーストラップ(グリース阻集器)の設置および適正管理のお願い(函館市)
参考:油脂類を公共下水道に流さないでください(福岡市)
水面に浮いた油脂を取り除かずにいると、グリストラップが油をためる力が落ち、排水管の閉塞につながります。郡山市の説明では、グリース阻集器は、排水を滞留させて浮上・凝固した油脂分を取り除くことで流出を抑える仕組みです。
川崎市は、点検と掃除を怠ると阻集能力が低下し、店舗の排水管の閉塞などの悪影響を与えるとしています。大津市は、3槽目に油がたまっていればすぐに掃除が必要だと案内しており、最後の槽まで油が届いていたら早急に除去すべきサインです。
参考:飲食店などのみなさまへ(グリストラップ)チラシ(郡山市)
参考:飲食店・宿泊施設など厨房施設をお持ちのみなさまへ(川崎市)
参考:グリーストラップを定期的に清掃し適正に維持管理しましょう!(大津市企業局)
町田市や川崎市の資料では、グリース阻集器の中を排水がゆっくり流れる間に、比重の軽い油分は浮き、ごみやカスなどの残さは底に沈むと説明されています。底にたまった汚泥(沈殿物)も、取り除かずにいると詰まりを招く原因になります。
底の汚泥は水面からは見えにくいため、気づかないうちに積み重なりがちです。京都市の指針は、残渣の除去と阻集器全体の清掃を月1回の周期としています。バスケットや油脂の掃除だけで済ませず、底の状態も定期的に確認することが大切です。
参考:飲食店・料理店のみなさまへ(町田市)
参考:飲食店・宿泊施設など厨房施設をお持ちのみなさまへ(川崎市)
参考:京都市下水道排水設備指針と解説(2023年版)第2章(京都市上下水道局)
熱い排水や油処理剤は、油脂の分離を妨げ、グリストラップで止めるはずの油を下流へ流してしまう原因になります。東京都下水道局によると、阻集器内で排水の温度が一定以下にならないと、油脂は凝固分離しません。同局は、能力を超えて排水を流し続けると、油脂が十分に分離する前に通過してしまうとも注意しています。
京都市の指針は、油処理剤は油脂分を乳化・分散させるだけで流出するため、使用しないものとしています。槽内をかき混ぜてグリースや残さを流出させる後付けのばっ気装置も同じ扱いです。
参考:飲食店のみなさまへのお願い(東京都下水道局)
参考:京都市下水道排水設備指針と解説(2023年版)第2章(京都市上下水道局)
詰まりを放置すると、店舗の衛生状態が悪化して営業に支障が出るおそれがあります。流れ出た油脂が公共の下水道を詰まらせれば、影響は厨房の中だけにとどまらず、近隣や第三者にまで被害が広がることもあります。
スタッフに日々の清掃を徹底してもらうためにも、放置した場合のリスクを店舗全体で共有しておきましょう。主なトラブルは次の2つです。
グリストラップの清掃を怠ると、悪臭や害虫が発生し、店舗の衛生を損なう原因になります。店舗の排水管が詰まれば、シンクの排水が流れずにあふれ、営業中の厨房作業が止まることにもなりかねません。
川崎市は、グリース阻集器の点検と掃除を怠ると、悪臭や害虫の発生、店舗排水管の閉塞などを招き、店舗衛生上の問題になるとしています。東京都下水道局や福岡市も、掃除を怠れば悪臭や害虫の発生を招くと注意を呼びかけています。においや排水の流れの変化に気づいたら、早めに槽の状態を確認してください。
参考:飲食店・宿泊施設など厨房施設をお持ちのみなさまへ(川崎市)
参考:下水道と暮らしのガイド(東京都下水道局)
参考:油脂類を公共下水道に流さないでください(福岡市)
京都市の指針は、小規模飲食店でも油分の流出で下水道取付管が閉塞した事例があるとしています。公共下水道に障害を与えると第三者にも使用制限が及ぶ場合があるとの記述も、見逃せません。
福岡市や郡山市などは、清掃費用を原因者に求める場合があると明記しています。福岡市では、原因者が数十万〜数百万円の清掃費用を負担した事例や、汚水の逆流で数百万〜数千万円の損害賠償が発生した事例が紹介されています。これは福岡市の事例で、京都市の金額ではありません。
参考:京都市下水道排水設備指針と解説(2023年版)第1章(京都市上下水道局)
参考:京都市下水道排水設備指針と解説(2023年版)第2章(京都市上下水道局)
参考:油脂類を公共下水道に流さないでください(福岡市)
参考:飲食店などのみなさまへ(グリストラップ)チラシ(郡山市)
詰まりに気づいたとき、スタッフの作業は槽の外から手の届く範囲にとどめます。広島労働局の死亡災害速報には、深さ約1mのグリストラップを清掃中に、作業者が頭から転落した状態で発見された事例が掲載されています。
深い槽に身を乗り出したり、槽の中に入ったりする作業は行わないでください。応急処置の流れは次の4つです。
関連記事:【京都市】グリストラップの清掃方法を徹底解説!飲食店・事業者向け手順・頻度・廃棄ルール
関連記事:グリストラップで起こる事故とは?実際の事例と清掃時の安全対策を解説
流れが悪くなったら、まずバスケットを取り外して中のごみを捨てます。郡山市や岡山市の資料でも、バスケットの掃除は、取り外して残飯や野菜くずなどのごみを取り除く作業として示されています。
京都市では、グリストラップにたまった野菜くずや残飯は事業系一般廃棄物にあたり、家庭ごみの定点収集には出せません。京都市は、一般廃棄物収集運搬業の許可業者に委託するか、クリーンセンターへ自己搬入(事前予約制)するよう案内しています。
参考:Q2-2-11飲食店等に設置されているグリーストラップに溜まったごみは、産業廃棄物ですか。(京さんぱいポータル)
参考:事業ごみとは(京都市)
参考:持込ごみの受入れについて(京都市)
岡山市は、油脂分は金網やお玉、ひしゃくなどですくい取り、かき混ぜて下水道管に流さないよう求めています。大津市も、槽内の清掃や汚泥の除去は専門業者への委託などで対応するよう案内しています。
京都市では、すくい取った油分や泥状の廃棄物は産業廃棄物(廃油・汚泥)にあたるため、バスケットの生ごみとは混ぜずに分けておきましょう。
参考:飲食店のみなさまへ(岡山市)
参考:グリーストラップを定期的に清掃し適正に維持管理しましょう!(大津市企業局)
参考:Q2-2-11飲食店等に設置されているグリーストラップに溜まったごみは、産業廃棄物ですか。(京さんぱいポータル)
最終槽のトラップ管は、掃除口のキャップを外して内部のぬめりを取り除き、作業後はキャップを元の位置に戻します。京都市の指針では、トラップ内部の掃除は2〜3ヶ月に1回の周期です。
東京都下水道局や郡山市、岡山市は、掃除後にキャップを忘れずに元の位置へ戻すよう呼びかけています。東京都健康安全研究センターは、トラップ管のキャップを外すことを油脂の除去の妨げになる行為としており、外したまま使い続けてはいけません。
参考:京都市下水道排水設備指針と解説(2023年版)第2章(京都市上下水道局)
参考:下水道と暮らしのガイド(東京都下水道局)
参考:飲食店などのみなさまへ(グリストラップ)チラシ(郡山市)
参考:飲食店のみなさまへ(岡山市)
参考:グリース阻集器の適正管理(東京都健康安全研究センター)
熱湯なら油が溶けると考えがちですが、東京都健康安全研究センターによると、熱湯を流すことや仕切り板を外すことは油脂の除去の妨げになる行為です。東京都下水道局は、流すタイプの油処理剤を使っても、下水道管の中で油が再び分離して詰まらせる場合があるとしています。
京都市の指針でも、油処理剤や後付けのばっ気装置は使用しないこととされています。食器用洗剤で詰まりを流してよいかを示した公的な案内は見当たらないため、自己判断で行わず業者に相談してください。
参考:グリース阻集器の適正管理(東京都健康安全研究センター)
参考:下水道と暮らしのガイド(東京都下水道局)
バスケットや浮いた油脂を取り除いても流れが戻らないときは、無理をせず専門業者に依頼しましょう。下水道法第10条第2項は、排水設備の清掃その他の維持を、その土地の占有者が行うと定めています。京都市の指針では、阻集器も排水設備に含まれます。
ただし、テナントとビルオーナーのどちらが手配し費用を負担するかは、賃貸借契約などによって異なるため、依頼の前に契約内容を確認してください。槽内の清掃や汚泥の引き抜きは、グリストラップの清掃業者に任せます。グリストラップより先の排水管や、取り除いた廃棄物の扱いは次のとおりです。
参考:下水道法(e-Gov法令検索)
参考:京都市下水道排水設備指針と解説(2023年版)第1章(京都市上下水道局)
京都市上下水道局によると、宅地内の排水管やますの軽微な詰まりは、ラバーカップやますのごみ除去で解消することもあります。対応できなければ京都市指定下水道工事業者に依頼し、費用は自己負担と案内されています。
道路側の取付管や本管の詰まりが疑われるときは、担当の営業所に問い合わせましょう。複数の指定工事業者の見積もりを比べ、「緊急出動・24時間・低料金」をうたう悪質業者や、排水管の洗浄・点検商法に注意してください。
参考:下水道管の詰まり(京都市上下水道局)
参考:水道・下水道のトラブルについて(京都市上下水道局)
参考:ご家庭で水道、下水道の修理を依頼されるときは・・・(悪質業者にご注意!)(京都市上下水道局)
参考:下水道の排水管の洗浄、点検商法にご注意ください。(京都市上下水道局)
油脂や汚泥は、収集運搬と処分それぞれの許可を持つ業者に委託します。委託には書面での契約とマニフェストの交付が必要です。
京都市の産廃ポータルは、メンテナンスで生じた廃棄物の排出事業者を、メンテナンス事業者か設備・ビルの所有者・管理者としています。清掃のように集めるだけなら、所有者・管理者が排出事業者です。
東京都環境局は、グリストラップ汚泥の排出事業者を設置事業者としています。法令上の排出事業者を確かめたうえで、清掃の手配や費用負担の分担を契約時に決めておきましょう。
参考:排出事業者責任の徹底について(環境省)
参考:事業ごみとは(京都市)
参考:マニフェスト制度とは(JWNET)
参考:Q4-6オフィスやビルのメンテナンスで生じる廃棄物の排出事業者は。(京さんぱいポータル)
参考:環境局都民の声窓口に寄せられた都民の声(平成30年2月分)(東京都環境局)
関連記事:グリストラップから出るゴミの正しい処分方法は?廃棄物の分類と業者委託のポイントを解説
応急処置で流れが戻っても、原因が残っていれば詰まりは再発します。再発を防ぐには、槽にたまった油脂やごみを決まった周期で取り除く清掃と、そもそも油脂を排水に流さない調理・洗浄の習慣の両方が必要です。
複数店舗を運営している場合は、清掃の周期や記録の付け方を店長任せにしないことが大切です。全店共通のルールにしておけば、スタッフが入れ替わっても管理の水準を保ちやすくなります。予防策は次の2つです。
京都市の指針は、バスケットは毎日1回、浮いた油脂は週1回のように、清掃する箇所ごとに維持管理の周期を示しています。店舗の清掃周期は、これを目安に決めましょう。
| 清掃する箇所 | 京都市の指針の周期 |
|---|---|
| バスケット | 毎日1回 |
| 浮いた油脂(グリース) | 週1回 |
| 底の残さと阻集器全体 | 月1回 |
| トラップ内部 | 2〜3ヶ月に1回 |
これは京都市の指針が通常の維持管理の周期として示すもので、全国一律の法定頻度ではありません。郡山市や大津市は油脂が多い場合に毎日の除去を案内しており、油の多い店舗は周期の短縮も検討が必要です。
地下に排水槽(ビルピット)がある建物では、京都市の要綱で阻集器の捕集物の除去と点検を使用日ごとに行うよう定めています。実施日・担当者・清掃箇所を記録して本部で確認すれば、清掃が手薄な店舗に早く気づけます。
参考:京都市下水道排水設備指針と解説(2023年版)第2章(京都市上下水道局)
参考:排水槽(ビルピット)の基準及び設置等の手続きについて(京都市上下水道局)
参考:飲食店などのみなさまへ(グリストラップ)チラシ(郡山市)
参考:グリーストラップを定期的に清掃し適正に維持管理しましょう!(大津市企業局)
油脂の流入を減らす基本は、洗う前に鍋や食器の油を拭き取ることです。大津市は、清掃を徹底しても油脂が多ければ排除基準に適合しない場合があるとし、次の対策を挙げています。
京都市上下水道局も、野菜くずや油類を排水口に流さないよう求めています。
京都市の動植物油脂類の基準は30mg/L以下です。この基準は、多くの飲食店では除害施設設置基準にあたり、超えても直ちに罰則とはなりませんが、水質の改善や下水道への排除の一時停止を命じられることがあります。グリストラップがあるだけで基準を満たせるとは限らないため、油を流さない習慣が欠かせません。
参考:グリーストラップを定期的に清掃し適正に維持管理しましょう!(大津市企業局)
参考:排水設備の日常の維持管理(京都市上下水道局)
参考:排水基準について(京都市上下水道局)
参考:京都市の排水基準(京都市上下水道局)
グリストラップの詰まりは、決まった周期の清掃と油脂を流さない使い方で予防し、自分で解消できない詰まりは専門業者に任せましょう。「ごみの窓口」を運営する弊社・山本清掃は、京都市伏見区を拠点に、京都市の一般廃棄物処理業許可と京都市・京都府の産業廃棄物収集運搬業許可を持つ清掃・廃棄物処理の会社です。グリストラップ清掃は、京都市内11区で承っております。
弊社の強みは、グリストラップの清掃と、事業ごみ(バスケットの生ごみなど)や産業廃棄物(油脂・汚泥)の回収をまとめてご相談いただけることです。費用は明朗会計で、ご要望を伺ったうえで書面でお見積もりを提示いたします。お見積もりは無料です。
店長任せの清掃を見直したい方も、複数店舗の管理をまとめたい方も、ぜひご相談ください。お問い合わせはお電話やLINE、お問い合わせフォームから受け付けています。営業時間は月〜土曜日の8:00〜17:00です。
山本 智也代表取締役
資格:京都3Rカウンセラー・廃棄物処理施設技術管理者
廃棄物の収集運搬や選別、営業、経営戦略室を経て代表取締役に就任。 不確実で複雑な業界だからこそ、わかりやすくをモットーにあなたのお役に立てる情報をお届けします。